リヤカーの午後 — 母の荷と私の重さ
通学バスから降りると
母が生花の出荷作業をしていた
花の束を抱え、風に髪を揺らしながら
私はランドセルを背負って
大きく、元気よく手をふる
母は少しだけ笑って、荷を下ろす
リヤカーの荷台が空になると
私の居場所ができる
母は、私をひょいと乗せて
そっとリヤカーを引き始める
そのとき、母はいつも
私の体重を確かめるように
手に伝わる重さで、成長を感じていた
花の香りと、夕方の風と
リヤカーの軋む音が混ざって
家までの道が、少しだけ長く感じた
私は、母の荷物になりたかった
重くても、乗せてほしかった
それが、母の手のぬくもりだったから
今はもう、リヤカーも花もないけれど
あの重さだけは、母の手の記憶に残っている
そして私は、今もその荷台に乗っている
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