疑いようもないわたしたち(悩み多き感情たちの詩 その5)

素直ちゃんは疑うということを知りません 

小さい頃 両親がいつも互いを罵りあっていて 
次の朝にはいっつも 
お父さんとお母さんは仲が悪いわけじゃないんだと 
何もなかったかのごとく トーストを齧っていても

一度だけ お父さんお母さん それに弟と
遊園地に連れて行ってもらったことがあって
楽しくって楽しすぎてついついはしゃいでしまい
お母さんがせっかく買ってくれたソフトクリームを落っことしてしまっことが
きっとすごく叱られるにちがいない
ごめんなさい ごめんなさいと何度も謝るも
お母さんはニッコリ微笑んで やさしく
また買ってきてあげるからここで待ってなさいって云って
弟の手を引いて行ったまんま
二度と戻っては来ず
ぽつんとそのまま 置き去りにされてしまっても
長いトイレから戻ってきたお父さんが
ひとりぽつんといるわたしを見ても
特に驚いているようにも見えないと感じてしまっても

お父さんと二人きりの暮らしになって
お父さんに新しい女の人が出来ても
あんまりかまってはくれなかったけど
忙しくってそれどころじゃないんだろうなって

素直ちゃんは何も疑いもせず
ただ素直にその状況を受け入れていました

息を吐くように嘘ばかりついている嘘つきくん
素直ちゃんとは保育園のときからのたったひとりの幼馴染で
とても仲が良かったのですが
何も疑うことを知らない素直ちゃんを
いつもからかっては
嘘つきくんは面白がってばかりいました

けれども素直ちゃんは
そんな嘘つきくんの嘘もからかいも
嘘だとは面白がってるなんて
疑がいもしないのです

何故かと云うと
嘘をついている嘘つきくんその人自身は 
本当だと云うことがわかっているから
なのでした

投稿者

東京都

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