晩秋
オレンジの花屑が風に流されていく
何もない南へ向かって
かなしいね、って
きみはぼくを見ないまま言った
夏はとっくに死んだのに
ぼくはまだ受け入れられなくて
もうどこにもない夏のかけらに
手を伸ばそうとしている
まぼろしでいいから
この指先にふれてほしいんだ
冷たい風に
吊るされたなきがらが揺れてる
誰も気を留めないまま
そのうちに消えていく
黒々とした樹々の
何かを真似た輪郭に
視界のすみを焼かれながら
ぼくはただ歩いている
オレンジの花屑が風に流されていく
何もない南へ向かって
かなしいね、って
きみはぼくを見ないまま言った
夏はとっくに死んだのに
ぼくはまだ受け入れられなくて
もうどこにもない夏のかけらに
手を伸ばそうとしている
まぼろしでいいから
この指先にふれてほしいんだ
冷たい風に
吊るされたなきがらが揺れてる
誰も気を留めないまま
そのうちに消えていく
黒々とした樹々の
何かを真似た輪郭に
視界のすみを焼かれながら
ぼくはただ歩いている
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コメント
切なさの濃度が爆上がりしてますねー
この詩の終わり方が好きです。
この詩を拝読して、夏の死を受け入れるということを思いました。
ああ、ここ雪国の冬が来る。山の上は、この間から雪が積もっては解けています。来週中位に、この里にも降雪があるらしいです。
夏が死んだ、という表現が新鮮です。
かなしいね、って
きみはぼくを見ないまま言った
というところが 特に好きです。
つい、この間まで夏だった。…その夏の残影と、晩秋の光景が、静かに、哀しく、交差していますね。最終連目、余韻が残ります。