南天の紅 ( くれない )

化粧っけのないその頬に
ほんのり月が住むような

とてもきれいな人でした

ときめきに
夢見たこともあったろう

恥じらいに
汗したこともあったろう

そぶりを見せることもなく
ただ一人
ひたすら母を演じた人でした

師走の風が舞っている

もしも叶うなら
お前に頼みたい事がある

遠く届かぬ面影の
密かに女で在る人の

その唇に届けて欲しい

庭先に寂しく揺れている南天の紅を

投稿者

長野県

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