奥鳥羽の秋 野辺場の秋
もうこんな窮屈なブラックホールでの生活は嫌だ
と彼は言った
しかし私の手のひらの上にも
本箱の中にも
ブラックホールなどなかった
【 奥鳥羽の秋 】
どうやら彼の言っているのは
ただの黒い穴のことのようだ
ただの黒い穴ならどこにでもある
例えばあなたの瞳だ
あなたの瞳は
ときおり透き通るように黒い青になる
私の瞳には
空の青を映す海を映したあなたの黒い瞳の中の青が
映っている
あなたは海辺で桜貝を耳に当て
私の話など聞こえないふりをしているが
桜貝から聞こえてくるのは
海の子守歌ではなく
私のささやき声なのだ
あなたのピンク色の耳にささやきかける
私のうすみどり色の声……
さあ
思い浮かべるがいい
そして反芻するのだ
この詩的な秋
この詩的な音に包まれた
落ち葉舞ううすみどり色の海辺に散ったピンク色の桜貝の中の
あの懐かしいギラギラとしたイルミネーションの固まりを!
*
愛しているようで
愛していなかった
【 野辺場の秋 】
それから落ち葉のように
視線は虚ろだった
何を着ても似合うのは
君のせいじゃないから
心配しなくていいよ
と
よく言い聞かせておくことにして
僕は
かわいい顔をしていた
やがて色のない風に乗って流れた
コメント
秋といえど10月はまだ華やかでまだ夏の熱をもって男と女はいられるのでしょうか。色彩が鮮やかなのは初秋ならでは。それにしても鮮やかで目がクラクラします。
しかし秋も深まっていくともう色が褪せていく。恋が褪せていくのは愛ではないからなのでしょう。
それにしても最近の11月は以前の秋の一か月遅れくらいに感じます。温暖化のせい?
たかぼさんもやっぱりwomanizer(歌ブリトニー)だなぁ。
王殺しさん。的確なポイントへのコメントありがとうございます! まあ私は1日50人から100人の女性に接していますが男性には1人も会わない日も珍しくなく真性のWomanizerと言えなくもないですがそれはあくまでも仕事であり、仕事とプライベートの決定的な違いは感情が入るかどうかであり、プライベートでは王殺しさんほどではないかもしれませんw
オクトーバーの秋・ノーベンバーの秋。たかぼっちのかわいい顔を思い浮かべました。
トノモトショウさん。恥ずかしいから思い浮かべないでくださいw
1連目を読んだ時点では、どう展開していくのか、予想がつかなかったのです。…が、次第に柔らかな叙情の世界に移っていき、作品タイトルとも相まり、色香をともなった読後感が残りました。
愛しているようで
愛していなかった
この2行、微妙ですよね。
長谷川忍さん、嬉しいコメントありがとうございました。
それから落ち葉のように
視線は虚ろだった
比喩と事象が見事に秋の残照の中で、交差する2行が素敵でした。
timoleonさん。過分なコメントありがとうございました!