ゲンゲ畑
二人 ゲンゲ畑で花を摘んだよ
そんなに離れなくても大丈夫
母さんのベッドは七色の羽で隔離され
毎日殺蟲剤が噴霧されている
妹の墓前に供えるために
どれだけ摘んだか君に見せたげる
君も胸いっぱいにゲンゲを抱えて
二人で開こう 真っ赤な謝肉祭を
谺が響き 君は静かに最後の線路を跨ぐ
それでも昨夜の夢が花咲くから
できるだけ静かに撒いておくれ
やっぱり笑うんだね 栗鼠が頬を団栗で満たし
君は引潮に載って頁の裏側へ帰って行く
でも忘れないで 何でもするから
婆ちゃんの店で消しゴムもくすねるから
ゲンゲの束が世界の縁にそっと置かれて
飛蚊症の蜜蜂が別離を祝福する
だけどもう少しだけ近づいておくれ
君の顔を黒い印画紙に記録するから
ほら 紫の風だ
ゲンゲが君の痛みを肩代わりする
笑って揺れる
さよならをする前に手を握って
小指の先でもいいから
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