底に沈んで見えたもの

どれだけ歩いても
道が前に伸びている気がしなくて
踏み出すたびに
世界が少しずつ色を失っていった

がんばれという声は
ときに刃より冷たく
励ましの言葉さえ
自分にはもう関係のない
遠い国の言語のように響いた

夢は崩れ
願いはほどけ
昨日より今日のほうが
少しだけ重く感じられる
そんな日が
静かに積もっていった

もうどこにも
自分の居場所なんてない
そう言い切れるほど
心の底に沈んだとき
不思議なことに
その底は思ったより静かで
ひび割れた闇の隙間から
かすかな光が
にじむように見えた

それは希望なんて
大げさなものじゃない
胸の奥で
まだ鼓動が続いている
ただそれだけの
小さな証のような光

生きる理由は
すぐに見つからなくてもいい
立ち上がれなくてもいい
今はただ
沈んだままでも
呼吸を続けている自分が
まだここにいるという事実だけが
ひとつの灯になる

もし明日も
世界が暗いままなら
そのときはまた
この底で休めばいい
あなたの重さを
責めるものは
もうどこにもいないのだから

投稿者

京都府

コメント

  1. 「あなたの重さを責めるものは もうどこにもいないのだから」
    心に残りました。ありがとうございます。

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