ペットショップのチワワ
家では猫が
変わらない午後をくれる
陽だまりの中で
ゆっくり瞬きをして
世界はそれだけで満たされているはずだった
けれどペットショップの前で
ふと足が止まる
ガラス越しのチワワが
小さな体をふるわせて
こちらを見上げるたび
胸の奥に
知らない風が吹く
触れられない距離が
いっそうその温もりを想像させて
抱きしめたことのない重量が
なぜか手のひらに残っていく
連れて帰ることはできない
それはわかっている
家にはあの猫がいて
私の毎日はあの柔らかい呼吸で
すでに静かに満たされている
なのにペットショップの光の中で
わずかに震えるチワワの瞳は
もう少しだけ
ここにいてほしいと
心に影を落としていく
犬か猫か
そんな単純な話じゃなくて
失わずにいたい日々と
触れたことのない未来のあいだで
胸がそっと揺れるだけ
今日も私は
家で眠る猫の背を撫でながら
ガラス越しの小さな鼓動を
そっと思い出している
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