ささやかなる反抗
なんてすがすがしい朝だ
トーストにコーヒーを飲みながら
広げる朝刊の一面に議員汚職の記事
そしてすがすがしさは私に別れを告げる
無常感漂う
あぶくは結ぶことなく消え去り
同僚の結婚式では部長の席が空いている
三日前に歩に転落 成金狙うほど若くない
一体誰が悪いのか 持ち駒を弄ぶ人の
誰のしずくが一番重いのか
忠誠を誓う 首輪の似合う人になりたくて
自分が選んだ飼い主に
真心ひとつありやなしやと
帰りの地下鉄 最近慣れてきた首輪をゆるめて
妻を思う 息子を思う
重さを増してゆく絆
近頃夕食前には胃薬が欠かせない
若いのにね
日常という圧力が胃壁を掘る
まだ若いのにね
あたたかな家庭がせめてもの救いと
妻を思う 息子を思う
愛に抱かれて眠る
息子、有名幼稚園合格の夢を見る
なんてすがすがしい朝だ
長続きしてくれよ
新聞に目を通さずに出かける すがすがしいぞ
ノートパソコンも軽い すがすがしいぞ
駅までの道のり 水をまく主婦 すがすがしいぞ
職場が賑やかだ すがすがしいぞ 何の話かな
“悲しき中年のささやかなる反抗か”
“悲しき中年のささやかなる反抗か”
########## 狂 ##########
オトサタノナカツタアノヒトガ
ユウベトビキリハデナクビワデ
スベテヲハキダシタラシイ
コメント
日常でのbad boy bluesかそれとも抑制されたpunkか。
しかし後半drugに溺れてたりしないですよね?
ストレスフルな世の中ですがね。
狂と書いてクルッと回転するラストの展開の虚しさ。首輪というワードはネクタイでもあり隷属の象徴でもあり自殺のアイテムでもあるってのが、表現として一番すがすがしいのも反抗かなあ。
トノモトさんと被りますが、「狂」の後、舞台が暗転します。ここが鮮やかというか、本当に虚しい…。首輪、クビワ、の喩、上手いなあと思いました。
王殺しさん、ありがとうございます。
何だか興味深い読み方をしていただいたようで、それが貴重で有難いです。
トノモトショウさん、ありがとうございます。
そうなんです、めちゃくちゃ虚しいんです。二十歳前の自分は社会をこんな風に夢想していたんだなと思うと、今なら何と言うんだろうかと。
案外同じようなこと言うかも知れない現実もなくはないですが、どこにフォーカスするかは選びたいものです。
長谷川さん、ありがとうございます。
########## 狂 ##########
としか表現出来なかったなぁと書いた当時もしみじみ思ったことだけ覚えています。
ここをどう表現するか、あるいはしないか迷った記憶があります。
吉野弘さんのように、
「発狂花ひらく」くらいのことが書けたら良かったのかも知れませんが、これはこれで若い記憶とともに自分では肯定的に受け止めてはいます。
レイヤーの下層にかなしみがあって、シニカルなようでそうじゃないような趣です。
全然上手い言葉が見つからなくて自分でも驚きですが「すごい」って思いました。
たちまこさん、ありがとうございます。はるか昔のことですが、なんかドぎついやつ書いたなぁと思います。