母校

ひんやりとした風が
赤煉瓦の壁に触れてゆく
冬の光は薄く
街路樹の枝先に
わずかな金色を残すだけ

気まぐれな思いつきで
母校・同志社の門をくぐった十二月の午後
そこには
かつての私が立っている気がした

吐く息が白く揺れるたび
過ぎ去った季節の影が
足元でそっときしむ
あの頃より少しだけ
大人になった心が
校舎の静けさに触れて
ふと立ち止まる

チャペルの尖塔の向こう
冬空は深い蒼を湛え
どこか懐かしい鐘の記憶が
胸の奥で響く

誰もいない中庭には
落ち葉が少しだけ寄り添っていて
それがまるで
昔の友の声のように感じられた

十二月の母校は
もう私を知らないのに
それでも変わらない姿で
静かに迎えてくれる
帰る家の灯りに似た温度を
そっとくれるように

投稿者

京都府

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