咆哮

溢れる情熱を歌おう
希望を、輝く未来を
時は過ぎ
現実は、目の前に結果を示す

偉人などなれない
普通の、その下の下くらい
危うくもかろうじて
生きている、今日そして明日へ

細やかな幸せがある
当たり前のこと
食べるものがある、住む家がある
共に過ごす人がいる

世の中という海の上で
溺れずに生きている
辛いこと、悲しいこと
何もかも受け入れ、感情を押し殺す

ただ、大きく目を開く
何ものも逃さず
現れた物ごとを、深く記憶に残す
これが運命だ
細やかな幸せを、壊そうとする化け物

私の心、奥底に大きな瓶がある
発火性の、爆発する
とても冷たい水が溜まっている

運命の不合理、世の中の無情
依怙ひいきの度に
一滴、また一滴
押し殺した感情が溜まっている

怒り
復讐とか
全ての存在に対しての、憎しみ

大きな大きな瓶は、満ち溢れ
零れる
その度に、私は目覚める
封印されし憎悪がよみがえる
私は、自分が何ものか気づく

冷たい水の満ち溢れた心の前に立つ
そっと、全身を瓶の中へと移す

ここだ、本当の私はここにいる
歯は牙となり、口は大きく裂けた
額からは角が、爪は鋭く尖りだす
身の丈は七尺を越え、目は紅く光る

暗闇に潜んでいる
人の皮を被り、背広を着て
何気ない笑顔を浮かべる
通勤電車で立っている
吊り輪を掴み、まわりを見渡す

皆、同じ
人の皮を被った、鬼しかいない
駅を出て会社へ向かう

誰一人
地上に人間はいない
天を向いて笑う

私は、鬼の咆哮をあげる
周囲の人たちも、一斉に立ち止まる
天を見上げて、咆哮をあげる

運命だと、人間を舐めるな
両眼から血の涙を流し
鬼と化した人間たちは
一斉に天に向かい、咆哮をあげている

投稿者

大阪府

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