あなたが助かればいいのに

古びた病院の待合室の受付のすぐ側のポスターに

あなたが助かればいいのに

と書いてある。

わたしはその待合を抜け、その人に会いに向かう。

そこは診察室というよりはただ陽射しに照らされた場所で

カーテンは昼間の暴力に押し出されるように揺らいでいる。

「あなたは誰を救いたいの」

その人は看護師やカウンセラーなどではなかった。

「傷ついた整脈を入れ替えてあげられたらいいのに」

包帯をぐるぐる巻きながらメスを握っている。

「それは、傷ついているの」
わたしは声に出した。

「あなたが助かればいいのに」

その人はメスを握ったままわたしの瞳孔を狙って瞳を押さえつけた。

「そう言ってほしそうな顔をしてる」

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