白雲の門

序歌(じょか)
題しらず
春の夜(よ)に
まどろむいぬの
夢のうち
よみがへりくる
まことのちかひ

一、忠の初め
題しらず
あけぐれの
森にたたずむ
いぬのこが
ぬしをおもひて
いのちをぞおく

二、無名の誉れ
題しらず
名もなくて
風を追ひつつ
ゆくみちは
ほめられねども
こころまことに

三、裏切りの手
題しらず
ぬしの手に
うたれしときも
なげかずに
まなこをふかく
やみにとぢけり

四、慈悲の声
題しらず
くらき夜に
ひとつのこゑの
きこゆなり
「おそれなすな」と
ひかりさしけり

五、癒しの願い
題しらず
このからだ
さけてもなほに
いのるなり
あだなるひとも
すくひたまへと

六、新しき主
題しらず
ちりのうへ
こゑにみちびかれ
たちあがる
いぬにあらたな
なをぞあたへし

七、試練の野
題しらず
花の野に
まむしひそみて
風のうた
ぬしのささやき
「ひとりならずや」

八、門のまへにて
題しらず
いぬなれば
とびらのうちに
はいるべしや
しきみのそとに
しづかにぞしぬ

九、最後のまなこ
題しらず
ひかりさる
そのまぎはにも
ぬしをみん
いのちのかぎり
まなこをこらし

十、永遠のねがひ
題しらず
われいぬは
なをもたぬまま
いのるなり
ちひさき檻と
あはれをたまへ

終歌(しゅうか)
題しらず
しろきくも
ぬしのゆびさす
そらのはて
いぬとそのはは
ならびてまつる

投稿者

東京都

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