分身

コンクリートに映っていた
 だれかの影が映っていた

 頭には二本の角
 でも、尻尾はふさふさ

 鋭いけど温かい
 そんな不思議な影だった

 今日はいい天気だね

 雲はぼくの友だち
 唯一の友だち
 辛い時にいつもぼくを見守ってくれた

 君のおかげだよ

 ぼくは尻尾を振った
 すると、影に流れ星が見えた
 一瞬の出来事だった

 ねぇ、流れ星が見えたよ

 ぼくはもう一回尻尾を振った
 すると、流れ星が流れた
 コンクリートに流れた

 へぇ~、暗闇にも流れ星はあるんだね

 雲はニヤけていた
 ぼくに彼女が出来たからだろうか
 いや、安心したからだ
 もう大丈夫だと
 もう放っておいても大丈夫だと

 ねぇ、本当の流れ星ってどんな感じなの?

 ぼくは見たことが無い
 なぜなら、影だから
 影の世界で生きてきたから

 じゃあ、今度見に行ったら?

 雲は指を差した

 あそこに今日の夜、流れ星が流れるよ

 ぼくは走り出した
 雲が息を吐いた
 風が後押しした
 尻尾は大きく揺れた

 先に、ぼくらで流れ星見ようよ

 コンクリートに流れ出した
 黒い流星群
 昼間の銀世界だった

 ぼくは君のことも好きだよ

 雲は喜んでいた
 ぼくと星を見ることが出来たから

 雲は喜んでいた
 影が分身になったから

 雲は喜んでいた
 ぼくの分身が走り出したから

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