
無題
年末の忙しない日曜の午後
下を向き急いで広島駅へ向かう親子
網膜をひたすら捉えるアスファルトは
ひび割れ、掠れ、ひとつとして同じものはない
やがて雨が降り
掌の皺のようなアスファルトのひびに
温かな緑の液体がひたひたと染み込んでゆく
太いひびから細いひびへ
視覚障害者用の黄色いタイルも乗り越えて
湧き出る緑の液体はとめどなく流れてゆく
正月の為に準備したお節料理も
賞味期限切れのお中元も
境内の狛犬や楠さえも飲み込んで
悠やかにありのままの姿に
戻ってゆく
生きとし生けるもの
あの日の記憶と共に
甦るアスファルトの緑
ひび割れた隙間から芽吹き始めた小さな緑
果てなき時間に晒された親子
来年は明るい未来
コメント