月脈

真夜中の冷蔵庫
 そこで脈を打っていた

 ドクドク、ドクドク

 側には食べかけのバナナ
 飲みかけのヨーグルト
 散らかったビール

 ぼくの血糖値は上昇していた
 物体とともに上昇していた

 ドクドク、ドクドク

 ぼくは冷蔵庫を閉めた
 部屋は真っ暗だった

 胸に手を当ててみた
 ポッカリ穴が開いていた

 なぜだろう?
 理由は分からない

 スマホのライトで照らしてみた
 やはり、穴が開いていた
 でも、ぼくは生きていた

 ぼくは冷蔵庫をもう一度開けた

 ドクドク、ドクドク

 やはり、物体が動いていた
 ぼくは物体を手にとった
 そして、穴に入れてみた

 ドクドク、ドクドク

 ぼくの心臓だった
 いや、かつての心臓だった
 もう穴には入らなくなっていた

 ぼくは窓を開けた
 そして、大きく振りかぶった

 ドクドク、ドクドク

 月が脈を打った

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