ライフ イズ ビューティフル

夕暮れ時になると思いだす
冬の岸辺にウミネコ一羽
死んだ魚をついばんでいる

大人しい子供だった
保育園のころ いじわるな女の子に
毎日つねられたりしていたのに
それを口に出して云えない子供だった
同じことをしているのに なぜだか
わたしばかりが怒られる役回りだった 
ちゃんと注意してあげなきゃダメでしょ
と なぜだかいっつも云われる役回りだった

いい子ちゃんだった
漢字や計算ドリルをせっせと解いては
学校で見せびらかしていた
だからみんなやさしかった 最初だけ
最終的には いつも軽く扱われた
ある時 親から貰って嬉しかったものは何かと
担任がクラス全員に答えさせることがあった
わたしの番になり 答えようとしたところ
まるでわたしが見えていないかのようにスルー
次の子の名前を呼んでいた

勉強はキライじゃなかった
小学校のころは算数が好きだった
読書は苦手だった
冒頭部分を読んだだけで
つまらないと断定してしまう子どもだった
いつだったか 遠足のことを書いた作文が
市の機関紙に載ったことがあった
あんなもののどこがよかったのか 今もって不思議だけれど
誰かに褒めてもらったことなんてなかったので
自分の書いた文章をほめてもらえたことが嬉しかった
このときの出来事がなければ 
わたしはいま 描くことをしていなかったと思う

運動はまったくもってダメダメだった
逆上がりもできないし 走るのも遅い
ドリブルもできないし 自転車にも乗れなかった
校庭に M字の形をしたアスレチックみたいな遊具があり
他の子たちは すいすいと登って降りてができるのに
わたしだけ どうしても山を越えることができない
何度か練習したりもしたけど ダメだった
運動は向いていないと ハッキリわかってしまった瞬間だった

早く大人になりたかった
早く大人になって ひとりで生活できるようになりたかった
親からも兄からも早く離れたかった
自分だけの居場所がほしかった
誰の機嫌に怯えることなく呼吸できる場所が
夢という夢なんて 何ひとつ持ち合わせてはいなかったけれど
それだけが唯一 わたしの中では
夢と呼べるものだった

太宰治にハマった 
小説を 表紙が破れるほど読み返した
完全自殺マニュアルという
当時流行っていた本も
何べんも何べんも繰り返し繰り返し 読み返した
死にたかった というより
跡形もなく消えてしまいたかった

いくつかの出会いがあった 
一緒にいるときはみんないい人だった
だけど別れる時は 何故かみんな怒っていた
彼らが何故怒っているのか わたしにはわからなかった
わからないから怒っていたのかもしれない

          夕暮れ時 長い長い影法師が
          いつまでもわたしのあとをくっついてくる
          わたしはなんだか侘しくなって淋しくなって 
          思いっきりその影を踏んづけてみたけど
          影はうんともすんとも云わず
          なおもわたしのあとをくっついてくる

死に方ばかり検索エンジンに入力しては
いのちのSOSに電話をかけまくってる夜

ただいま大変混み合っております
しばらくしてからもう一度おかけ直しください
ツー ツー ツー ツー

『カミソリは痛い
水は冷たい
薬は苦い
銃は違法
縄は切れる
ガスは臭い
生きてる方がマシ』

17歳のカルテって映画で
そういえばアンジェリーナジョリーが
そんなセリフを云っていたっけ

ブツ切りにされた回線は
今夜もどこにもつながらずに
行き場を探して
ぶらんぶらんと揺れている

夕暮れ時になると思いだす
冬の岸辺にウミネコ一羽
死んだ魚をついばんでいる

死んだ魚を
ついばんでいる

投稿者

東京都

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