新聞一枚
静かに騒めく朝の喫茶店に
焼きたてのトーストの香ばしさ
片手に読む新聞のインクの匂い
一面に載った写真は
壇上で熱弁する男に
ぼやけた群衆が歓声で応えて
男は言葉で夢を語り
群衆の熱意が力を貸して
巨大な足跡を刻もうとし
平和をうそぶき
親しげに笑いかけながら
線のない地図を作ろうとして
大切なものは何かと
説き伏せる声は
このパンの温もりを塗りつぶして
ヒタヒタと寄せる足音は
背後に迫り
新聞を読むこの手も
歓喜に染まる群衆の影と
なってしまう日は近づき
ハラリ、と
めくる新聞一枚の重さ
冷めてしまった珈琲は
ドロリ、と
避けられない現実を飲み込む
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