カントリーロード
伸び果てた爪を赤いまだらのパンダが眺めている
5年前に買ったハーフコートはまだ現役で
季節外れの驟雨が人が住む広さではない小部屋の窓を叩く
赤いパンダのまだらが伸び果てたハーフコートに向かって現役だ
大学入試共通テストの日に障碍者手帳で映画を眺める
聞かれれば答えるし答えたくないわけではない名曲をご紹介しましょう
昔月に住んでたんですよ、地下に穴を掘って暮らしてたんだけど
それが秘密警察に見付かってね、税金の未納の件で追い出されました
払いたくても月にはまだ通貨に代わる金もなくて仕方なかったんです
皿洗いするような食堂もなかったし
(観客どっと笑う)
見ようと思えばこの部屋からでも赤いパンダの伸び果てた爪が見える、そんな風に見える月がね
たんぽぽもひまわりもゆりもさくらも咲かないんです、いくら故郷でもね、帰りたいとは思いません
月にも郷土料理ってあるんでしょうかね、地球に見立てた青いカクテルなんて美しいでしょうね
月から見る空は真っ黒なんです
黒空
地球が青く見えるのも太陽に照らされているからなら
月が銀色に光っているという話
なんだか不思議ですね
太陽は同じ色で光っている訳じゃないんだなぁ
車一台買える値段のランプを家賃5万の三点ユニットバスのある部屋に置いて
太陽光よりも贅沢をする「可愛い王様」という名前の観葉植物たち
トンネルを抜けてもそこは雪国じゃなかった
あたたかいエアコンの風に吹かれながら彼らは月を知らない、草木の一本も生えない荒野の夢を見る
「地球にお帰り、めくらのもぐらさん」
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