続々 見習い魔術師

続々 見習い魔術師

あの夜は星が常に増して降った
失敗したと思っていた僕の魔術
枝葉の如き些細な見当違いは起こったが
大筋の幹の部分は成功していたのだ

そう喜んでいる僕へ
モノクルの奥から琥珀のような目をじろりと向けて
銀色の猫は宣告した

あれは星ではないのだと
昼間に空へと飛ばした水滴が
夜露となって戻ってきた現象なのだと

僕は思い違いの感動を霧散させた
僕は魔術師に向いていないのだろうか
いよいよ田舎に帰る準備が必要やもしれぬ

そうは思ってみたものの
一夜明けると
まだ帰ることもないと
僕は思えて来た

朝飯の準備で
白い平皿を割ったことにより
その思いはさらに強固となった

つまるところ、
人間は失敗するものである

ひとつの真理に行き着いた僕を
モノクルの奥から琥珀のような目をじっと見据えて
銀色の猫は口を閉ざしたまま

朝飯の後片付けでは
スープ皿を割ってしまったが
真理を得た僕は狼狽えもしない

つまるところ、
人間は失敗するものである

皿の破片を箒で掃き集めている僕へと
モノクルの奥から琥珀色の目を見張り
銀色の猫は厳かに術を唱える

僕が復唱してみると
塵取りの中の皿の破片は
見事つなぎ合わさった

平皿とスープ皿の破片はごっちゃになって
見たこともないような奇妙な皿が出来上がったが
芸術的と言えなくもない

モノクルの奥で琥珀色の目を細め
銀色の猫は歪な皿に満たされたスープを
満足そうに匙ですくっている

やあれやれ!
見習いの魔術も
なかなかどうして、大したものでしょう

投稿者

大阪府

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