複色のばら[改訂]

 稚くて美しくて
 ふたりには生成り色にうっすらと
 赤みの色づく覆輪の
 ほころびかける薔薇が似合う

 交わす口づけもさわやかに愛を誓い合って
 いつか大人になり
 何ということはなく
 涙もうかべず別れていった

 むかしむかしから
 きっといかなる場所にでも
 ころがっていて繰り返される
 なんでもないお話だけど、ふと
 人の道をあやまらせる
 だれしも後もどりの出来ない
 とても細い道だから

 苦い涙をのみこんで
 鏡に映る自分をいとしみながら
 こんな小さなお話の中に
 おぼれさる
 昏夜のそらのぬいしろに憶いさえも
 手放してしまえば

 鋏を手にして花のない薔薇を摘もう
 茎と葉の冷たさが、指先から
 消え失せた匂いの粒子をよみがえらせて
 手のひらを伝って心臓で結晶する
 
 

投稿者

滋賀県

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