緑のメダイヨン

静かな木立ちの
ずっと奥の方に
忘れ去られた古びた銀の鏡のようなふ
円窓がひとつ
ひっそりと浮かんでいる
外の気配は
冬景色の底でかすかに軋む

縞模様のマフラーをきゅっと巻いて
小さな両手で抱きしめている栗鼠は
真冬を越えるための
ひとつの希望
つぶらな瞳は
遠くの足音を聴いている
抱きしめた希望は頼りなく
守れば守るほど震えてしまう

樫の木は
風を避ける緑の羽根を休め
重たげなドングリは
時を告げる鐘のように
枝から垂れる
その丸みは
どこかひび割れを抱えた円環の記憶

あしもとに結ばれた
柔らかなリボン
それは このささやかな平和を
誰にも邪魔されないように閉じ込める
やさしい魔法
けれど 結んだ指先には
ほどけることへの
ためらいがまだ残っている

外の世界が凍てついても
この円環(わ)の中だけは
いつもほのかに あたたかい
それでもこの暖かさを手放すには
少しだけ勇気が足りない

メダルの中に描かれたのは
終わることのない緑の物語
その始まりを知る者は
もはやここにはいないのに
誰も触れぬまま 芽吹き続ける
物語は未練を残して
寝息をたてている

投稿者

静岡県

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