カナシミが足りなくて
喜劇的な毎日は
ある光の屈折で
その裏側にて翳りゆくので
死してなお拡散する情念の滲みを
瓶詰めして窓際に置いておく
怒涛のごとく退屈な
朝から夜にかけて花開き
肉から骨に沿って裏返し
喪失の芽を無心に摘み取っていく
かつての写真はもう捨てた
楽園に辿り着く頃
思い出すのは何色の光彩か
やるせないほど咲き狂い
小さく溢れる涙のように
あなたのことを忘れてしまう
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.055: Title by 瀬暮]
コメント
一連目の描写、特にいいです。
からだを這い巡ってざわめきました。
カナシミが足りない世界の方が良い。でもやっぱり、哀の連も読みたかったなと思いながら。