優しさ

自分はたまに
積極的に優しさを発揮したくなるのだが
今日もそういう気分になって
豆腐屋の雑種犬の頭を撫でに行った
ついでに豆腐を一丁買い
ついでに豆腐屋の店主と
お天気の話なんぞした

優しさが体に充満した反動で
帰り道の豆腐が重い
しかしまだ
優しさが抜けきっていないとみえ
今日の豆腐屋での態度を
自分の平常とすれば
自分の人生は
晴れやかになるだろう
などと余裕な考えをめぐらせた

優しい気持ちの名残は
夕暮れの薄明かりのように
一日の終わりまで
ぼんやり心を暖めていたが
やがて夜が訪れる

次に豆腐屋に行った時
雑種犬は今日の自分を期待して
しっぽを振って歓迎するのだ
自分は犬には目もくれず
外界からの作用を一切遮断し
また自分の無愛想が
外界にいかなる不調を与えるかにも気を配らず
うつむき加減に
豆腐一丁を買っていく

自分は自分の移ろいがちな状態に
翻弄されているだけであるが
豆腐屋の雑種犬には
さぞや迷惑であろう
豆腐屋の店主に至っては
さぞや不可解であろう

優しさを発揮したくなった時
自分はもう
豆腐屋に行かないが良い
今夜はそう決意したが
また優しい感情が頭をもたげた時
こんな決意よりも
優しさを優先しようと
自分はきっと
豆腐屋に行くのだ

これを優しさと言って良いのか
自分には分からなくなってきた

投稿者

大阪府

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