自然な命

神様。
いつからかこの言葉と遠く離れてしまった。
幼いころ、もっと純真な心で、
あなたのことを呼んでいた。
何でも叶えてくれるのだと、
どこかにいつでもいるあなたのことを、
サンタさんと同じくらいに私は信じていた。
家の近所にある小さな神社。
一度は燃えたその御宮に
よく家族でお参りをしていた。

けれども神様なんていないのだと、
ひばあちゃんが教えてくれた。
大好きだった。
いつもお世話をしてもらって、
キャラメルを一緒に食べたり、
本を読んだり、散歩をしていた。
病気でどんどんやつれて、痩せて、
小さくなっていくひばあちゃんを見るのが辛くて、
入院したとき少しだけ安心した。
やっぱり会いに行く頻度も徐々に減った。
非日常ほど人は日常にしたがる。楽だもの。

痛いよ、辛いよ、無機質のベッドで、
人が死ぬ瞬間を初めて見た。
鍵のかかったドアをノックするようにして
引きちぎったダンゴムシ。
パンという音にサンドイッチされて
つぶれた蚊。
餌をやり忘れて飢えた
もう思い出すこともできない虫。
台風の日に落ちて地上の重力を初めて知った金魚。
ピーという音を合図に
どこかに消えていったひばあちゃん。

どれもこれも同じ命。
残されたのは体だけだった。
私たちはその体をどうしたっけ。
どうしてあんなに涙が止まらなかったのだろう。
けれどまたようやく、
私はあなたのことを信じたくなったのです。

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