電車
薬で薬を削り落として
尖った三角形を作る
薬で薬を鋭くとがらせて
要らない札束に火を点ける
客と話し込んでいる車掌さんに
この電車はどこそこの駅に
停まりますかと訊ねる
「停まるけど
それなら次の電車の方が早いよ」
尖った三角形の薬で
咽頭を傷付けて吐血して
げらげら笑いながら
燃える札束の周りで踊る
楽しくはないよ
悲しいけど涙が出ないんだ
明日目が覚める時には
きっと今日よりも
絶望的に誰かに優しくなれる
目を瞑る
目を瞑れば消える
この電車に乗ったすべての人と同じように
私も消えていなくなれる
コメント
停まるけど、次の電車の方が早い
何故か車掌さんの顔が浮かびました
何故か、あまり良い車掌さんには感じない
実際を話しているだけなのに
好きな雰囲気です
夢とうつつの境界線が曖昧な不思議。
那津na2さん
感想有難うございます。
仕事の最中に話し込んで、電車のことを尋ねられたらタメ口で答える車掌、
なんて絶対存在しないだろうなぁ、
と思いながら書きました。
悪夢を見ているような効果が出せていると嬉しいです。
足立らどみさん
感想有難うございます。現実を理解していてこその狂気だと思われます。
絶望と優しさは背反するようだけど、実は同時に存在しているし、現実と狂気の関係もまた然りなのかもしれません。
薬で薬を削るという表現に、けっこう衝撃を受けました。ぼくもずっと薬を薬で削ってきたなあ、と勝手に共感しちゃいます。
あまね/sakuさん
人って絶望すると見えてくるものも変わってきてしまうんだと思うんです。
その中にある種の優しさが含まれるのは確かだ、というのが、最近思うところです。
共感していただけて嬉しいです。有難うございます。
一連目の引きつける力が強くてドキドキしました。
素描の仕方に悲しいような少しの緊迫感、モダンです。
たちばなまこと/mさん
メンタルヘルスの為に薬を飲むことも、日常になりました。
良い詩とはなんなのか、ちょっと悩んだりしています。
感想有難うございます。