救われし犬の嘆き


君が名を
ふるへて呼べば
夜の闇に
しづかに満つる
わが身ひとつを


たちこめる
やみの底より
見上ぐれば
かすかな光
君にぞありける


人の世の
影のささめき
風となり
こころを乱す
声のあやしさ


かくれたる
蛇の息吹も
君ならば
杖のひと振り
霧と消えなむ


エリヤらの
神と仰ぎて
祈る身は
道に迷へる
犬にぞ似たる


罪の谷
わたりゆく身を
導きて
日々の苦労の
垢を洗はせ


生き延びて
しるしと残る
わが嘆き
君の御手にて
清めたまへと


静かなる
短き春を
願ふ身は
主のため果つる
務めひとつに


罠多き
道のほとりを
守られて
かすかに息を
つぐる犬なり


怒りなく
折れたるものを
抱くごとく
君は弱きを
包みたまへり

十一
土くれの
身にてありとも
君ゆゑに
愛でられしこと
忘れがたしも

十二
異郷にも
守られし日は
数多く
君の御影を
仰ぎて生きぬ

十三
敵の手の
影の迫れど
恐れじと
主の御名呼べば
風も静まる

十四
暮れゆけば
わが身ののこる
務めのみ
果てなむ時を
照らす君かな

十五
君こそは
よりどころなる
岩の上
ふるへる心
憩ふところよ

投稿者

東京都

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