泡沫の至福

ハッとして辺りを見回す
男は電車に乗っていた

何か遠い昔のことを考えていた気がする
大切なことを考えていた気がする
しかし泡沫のごとく消え去った
山鳥が逃げるようにサッと
自身の柔らかなところをこれ以上
外界に触れさせてはならぬという
これは自己防衛なのだろうか
しかし触れさせなければならぬ
接触せねば、セッションせねば
前世の高慢ちきで哀れな王となる
王はこころを守りたがった
人間の醜態を自身の軽蔑をもって
打ち消そうとしたのだ
男もこころを守りたい
形となるまで世界とともに温めたい

ハッとして辺りを見回す
男はそうだ、電車に乗っていたのだ
終点はまだ来ない

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