背伸び
あなたのそばにいるときのわたしはきっといつも背伸びをしている。体ではなく、心の。 ゆっくりと信号機が明滅している。急ぎ足で横断歩道を渡った。誰に急かされたわけでもないのに。
あなたはきっと気付いている。わたしのささやかな抵抗なんかきっと気付いている。
あなたは安心している。そう思っていないと歩くこともできない。
低く腹の底で響き、全身に染みわたるような声が鼓膜を震わせた。大切な儀式を繰り返した。
ぽん、とボールを放り投げるみたいに海に行きたいとあなたは言う。どこに行ってもおんなじだった。あなたと話したいだけだった。あなたが知っていることを、あなたが当たり前に選び取るものを、わたしは触ることができない。それでもよかった。よかったのだけれどやっぱり、少しは触りたかったから触れているフリをして。想像をして。自分の内側と外側を分ける皮膚を撫でる。
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