ダブルルーム・ダイアリー
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1.
半分だけ拒めた日常を流す
部屋の灯り 赤く
うつろでこそ 欲した
これは いつか
かつて見た日常になるのだろうか
二人
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2.
眠る乳房
この人生を遂げられるのか?
身体を終えるいつかの日への浄福を
この日
どんなにも
わたしたち
いま ここに
わたしたち
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3.
午前
微小の陽がこぼれる
いつかの歌の意味を知る
「切なく」を閉じながら
僕は記しながら
手を握る背に
灼かれる
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4.
非なる日常
息
背中に
今日のための線を引く
この日がある
あの日常を続ける前に
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5.
名前一音ずつ
区切って
語り
かける
眠る背中に
「思い出」という名前にしたくなかった
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6.
髭が白くなって久しいこの顔を
ホテルの鏡に流しながら
写真に撮る
カメラを使わずに
かたわらの息
聴きながら
閉じたカーテン越しに
決して開けない窓から
日付を 投げた
「・・・・・・・・・」
(この詩を名づけない)
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7.
人生を明かしてくれたひとの
まだ眠る微笑を待つ
あどけなく
私たちは交わりました
あどけなく
あどけなく
わたしたちは 詩になりました
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8.
14:09
確かないま
生きなければならない
いま一握りさえ
儘ならずに
なお 一握りの肯定を
9/10, 2019
Karasuma‐Oike,
Kyoto city
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9.
旅先の
抗不安薬
日常からの連なり
切なる秒速
ひとを乞うシャワーの音から
行方求めず 情が止め処もなく流れて
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10.
うず高く
吸殻の部屋
日々を閉じた わたしたちは
あと どれだけ
かたく
かたく
肉を重ねる試みが必要か?
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11.
もうすこしだけ
ゆっくりと
刻む
暖かみのさだめがほしい
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12.
つらつらと話す
女詩書き
夜が響く
儘ならず
音が夜を流れる
生きるのだ
つらつらと
日々が続いていくのだ
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13.
女へ いつかの日のおまえへ
豊かだった夕べ
あの豊かだった夕べこそが
おれたちが戻りゆく明日だ
おれたちへ
いつかのおれたちは まだ眠るこの朝だ
口づけたら
一瞬 生まれるように 身を寄せた
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14.
とむらいの夜のビール
なおつらく戻りゆくこの先を
おれたちは 亡き者たちと生きる
とむらいの夜のビールで
新しいおれたちをわかちあいながら
なおつらく この夜から
不確かなおれたちが
確かなこの夜のあとを生きる
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15.
人生が
わすれがたい映画を祈る
わすれがたいシークエンスで祈る
この三日間を祈る
眠るとなりを
おれがこの朝で 祈る
おまえを祈る
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16. (女から)
雨の街走った
音 の 中 に 二人
506号
氷 の 音
煙 火 の 香り
ひっそり と 二人
未来 は きっと いつか
世界 は ここに
二人
雨音 どうか
今日は 優しく
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17.
数百キロメートル先の地に
モヒートの 淡い緑に眠る
雨のやさしさ
地下道の傍ら
黒いシースルー
抱えられた隆起
詩が三日間に とどまろうとする
生き返らせた言葉たちは
あの背に帯びた熱い温度から
まだおれに刻ませようとする
「ただ重なり合ってるからこその『好き』だと思うの」
モヒートが まだ肌に残っていた
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