踊り子

アルコールと恋愛依存症の母が
唯一読み聞かせてくれたお話に憧れて
物心つく前から毒リンゴの食べすぎで
ありとあらゆる耐性を手に入れたリサは
死なない程度に気絶できる人材を探すウォルトのお眼鏡に叶わず
オーディションに書類落ちし、絶望に叩き落された
毎夜、元々々々彼が買ってくれるよう仕向けたヨギボーの上で
めそめそ泣き崩れるリサを見かねて
気晴らしに冬の海にでもいこうぜというフィアットの誘いを
そんなきれいなもの見たら、どうせ幸せにならなきゃいけなくなるじゃない
と、無下に断った
そのうち、リサの涙と海の境目があいまいになりはじめ
リサの憎しみと青い空の違いがはっきりとはわからなくなった
そんな頃を見計らって、ようやく玉の輿を諦めたリサは
ため息一つ、なんとなくで踊り子として食っていく決意を固めた
地下の紫煙と酒香ひしめく舞台で
ひらひら回りながら
たまに投げつける小器用なウィンクに
目を血走らせながら群がる男たちは
滑稽を通り越して可愛らしくて
嘘がないって美しいんだなとリサは思った
それから数年の時が経ち
数年の間でリサは母親になって
与える愛の存在とその大きさを知って
アイコスをやめて
そしてリサは今、小さい女の子の寝息を邪魔しないように
そっと取り付けた青い三日月の髪飾りが
一番たのしそうに陽だまりをはねかえす角度の微調整に
ああでもないこうでもないと、頭を悩ませている

ああ、やっぱり幸せも過ぎれば体に毒だな、と心の中でつぶやいて
ため息ひとつ、彼女は愛する人の帰りを待ちわびている

投稿者

東京都

コメント

  1. そんなきれいなもの見たら、どうせ幸せにならなきゃいけなくなるじゃない
    と、無下に断った

    ここのフレーズを読み、リサの、聡明さと哀しみを想いました。幸せは、外側ではなく、内側に淡々と、でも柔らかくあるのだな。ひとの生はバランスだと思うのです。

  2. 恋愛依存の元に生まれたリサかーだからか!

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