蒼穹を縫う銀の糸

瑠璃色の沈黙を
五月の薫風が洗い上げた
一分の淀みもない天の鏡
そこはまだ
誰の記憶も書き込まれていない
真っ白な未来へと続く
広大なキャンバス

一筋の「銀の運筆」が走りだす
見えない翼が引き去る 
旅人の吐息あるいは
空の絹を鮮やかに縫い合わせる祈りの線
永遠の青を
一瞬の「いま」で潔く裂いてゆく

描き終えたそばから
白き軌跡は解(ほど)けはじめ
淡い花霞のように
青の深淵へと溶けてゆく
届かぬ距離だけが
胸に残る
風の中にだけ
行き先を知らぬ熱情を滲ませて

見上げる瞳のなかに
ひとしずくの光の尾を遺し
世界はふたたび
圧倒的な静寂(しじま)へと
帰ってゆく
ただ あとに残るのは
どこまでも高く
どこまでも透明な
自由という名の
晴れ渡った五月の空

投稿者

静岡県

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