
月光に染まる野辺
野のほとりの夜
濡れた草が
膝裏にまとわりつき
ほどけかけた息が
触れ合う
白い月光が
肩先をなぞり
肌のあわいを
やさしく照らしている
風がそっと
髪をすくいあげ
ためらいごとを
どこかへさらってゆく
虫の音は遠のき
銀の夜露が
ふたりを囲んでまたたく
やがて東がかすかに淡く
露が唇の端から
こぼれ落ちるころには
名もないかたちも
境いめさえも
とけてしまい
月のひかりだけが
ここにいたことを
静かに覚えている
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