りそうのひと

「あのひとむかしっからキライなの」
その日、キライという言葉を
あなたから初めて聞いた

「若い頃けっこうモテたのよ」
自慢話もちらほらと

それから

シンクの汚れが目立つようになり
出来合いの惣菜が並ぶようになり

「ほんとにだらしなくなってダメね」
はがゆさをこぼす あなた

それでも

「みんなに迷惑かけないように」を口ぐせに
ラジオ体操にサプリメント
そうじ洗濯もぼちぼちこなし

「この炊飯器、この頃炊けても知らせないのよ」
またすこし聞こえが悪くなったらしい

「おいしい煎茶があるのよ」
急須を傾ける手首にサロンパス

向かい合う
午後の茶の間

煎茶の渋みをいただきながら
うん、うん、とうなづいて
あのひと、のわる口を
丁寧に聴いている

もういちど、
あなたの娘になれた気がして

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