紙占い

雷鳴が聞こえて
寂しい感じがした
薬を飲み忘れてしまい
そのことも含めて
あの椅子に座っている人が
被告人さんなのだと思った
風が吹くと嫌なので
雨戸の建てつけの話も少しした
被告人さんは海に釣り糸を垂れて
雷鳴がすると
やはり寂しいのだろうか
今のはどこ、みたいな表情で
椅子の位置を直したりする
裁判長と名札の付いた人に
質問するよう促されるけれど
わたしは何を聞くべきか分からずに
釣った魚の色はどうですか、とか
冷えた身体はいつまで続きますか
などと聞くしかなくて
いつまでも埒があかない
被告人さんは雷鳴の度に
今のはどこ、と言いながら
釣り糸の位置も変える
おそらく本当は
釣りなんか好きではないのだ
時間だけがゆっくりと過ぎて
裁判長の人は飽きたかのように
法律書を破いて紙占いをしている
どうしてあんなにも
愛してやまなかったのだろう
人も物も
被告人さん
と声をかける
はい、と
椅子に座ったわたしが
小さく返事をする

投稿者

コメント

  1. 生きている内に、自分でもよく分からない歯車の中にいて、期せずして罪を重ねているのかもしれない、と感じました。
    あれよあれよという間に、ここまで来て、少し落ち着いてみると、このしっくり来ない椅子はなあに?というような、ちょっと自分自身でも驚き飽きれてしまうような…。どうしたら良いのでしょう。
    ということを、考えさせられました。
    大人になっても、戸惑いだらけの私です。

  2. @野鳥倶楽部
    野鳥倶楽部さん、コメントありがとうございます。
    その感覚、よくわかるなあ。望まれてきたはずなのに、椅子に違和感があって、その後も自分で探した椅子なのに居心地がちがったり。スピリチュアルっぽくなってしまうけれど、もし仮にも魂というものがあるならば、その器となる身体にうまくはまっていないとか、なんとか、困っているわけではないけれど、野鳥さんがおっしゃるような戸惑いというか。
    時にはその戸惑いがとても楽しかったり。

  3. 人生の時間が裁かれる日には古びた懐中時計を被告席に座らせようよ、誰もそれを咎めはしない、誰もその時外を見ない、雷鳴が音符とともに弁護席に座るだろう、頭を丸めたカライトソウが、少しの眼で合図する、もう死者はみきりをつけて、窓から身をのりだしている、がらがらと部屋中が鳴っている。そして君が・・・。

  4. @坂本達雄
    坂本達雄さん、コメントありがとうございます。坂本達雄さんのコメント、いつもイメージがスパークします。

    古びた懐中時計を被告席に座らせようよ

    特にここが好きです。優しくて、美しいほど残酷で。

  5. 坂本様のコメントもそのまま詩の芸術のように響きました。

    自分をそんなに責めるなよ・・と自分に自分が呆れられているような。
    そんな一人芝居を繰り返す日常がそここに。

  6. @風太郎
    風太郎さん、コメントありがとうございます。
    多分、私は誰かに甘やかしてほしいのです。自分を責めれば、自分自身が、そんなに責めるなよ、と甘やかしてくれる、、、
    そんな感じなのかもしれません。

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