世間と自然

雑草はなぜ抜かれねばならぬのか
とびでた枝はなぜ伐られねばならぬのか
雑草にだって命はあるんだぞ
枝だって身体の一部なんだぞ

こどもの頃
植木鉢をいくつか
物干し台に出し
待ったのだった
きれいな花でなく雑草が生えるのを
彼らにも命がある
抹殺しては
かあいそうだと

けさ
キュウイの実をとる
じゃまな小枝を伐る
石垣のすき間に生えている
コンクリのすき間に生えている
雑草を刈る
蔓を切る
かあいそうだなんて思やぁしない

森が欲しい
キツネと遭って
だまされてみたい
―怖いけど
クマを思いたい
神になるクマを

いまでも雑草は声を出している
いまは耳に入る前に遮断する
いまでも木は深い呼吸をする
人はもうキツネにだまされない
クマを見れば撃ちころす

戦争直後に建てられた木造の
雑草を育てた
小っちゃなその家は
もうとっくになくなっている
キツネもクマも
動物園でしか見たことない

投稿者

神奈川県

コメント

  1. 有名な話だけど、昭和天皇の言葉に「雑草というものはない」というのがあるそうです。生物学をやってたしね。

  2. 世の流れには抗えずとも、大事なことを語っていますね。

  3. タイトル通り、自然を世間と置き換えて読むことでテーマが浮き彫りになるが、話者の心境が昔と今で変わってしまってるところが、真にこの作品のテーマであり、おそろしい部分でもある。

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