
終末論
帰って来たはずのあなたが
もう支度を始めている
またいつの間にか帰って来て
まばたきする間に出掛けようとする
認められなければ死んでいるのと同じ
目で見えないものも形にならないものも
あじさいの花が開く速度で
ゆっくりと振り返るあなたの背中にある
急ぎ足の昨日
私の名前と同じ韻を踏む「おはようございます」
もう帰って来ないで、一人にするのなら
言い掛けた言葉を強心剤のように吞み続ける
微笑んでいる顔だけを思い出して
出掛けてしまう前に、帰って来て
覚えててくれるならさようならなんていらない
おはようとお帰りとまたねを忘れないで欲しい
紋白蝶の羽が雨のように降っていて
何も見えないことは無上の幸せだと気が付く
また今度ね
また今度ね
切り取られた闇が忍び笑いの形を作れば
光は追われた兎のように四方八方に駆け抜けて
昨日の夜から帰って来たはずのあなたが
明日の朝へと旅立っていく
あなたの頭の中にアカシアの樹は生えているのかな
わたしの頭の中にバオバブが生えているみたいに
そのアカシアの枝の先が風にそよぐのを見て
わたしの頭の中のバオバブのことを思い出して貰えるだろうか
わたしがいつかバオバブそのものになってしまう前に
モニター越しの世界の終末は明るい
そこではまだ誰一人として死んだことがないみたいに明るい
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