夏色
海風に帽子を押さえて
微笑む貴方を見ていた
うしおの匂いがする
夕空が眩しい
笑顔は夏色をしていた
繋いだ手のあたたかさも
触れる肩も、髪も
ただ、
瞼の裏に消えない貴方だけ
溶けないその笑顔が
愛おしかったと
気付いたのは
そう、
今になってだった
蝉時雨、濡れたアスファルト
祭囃子が聞こえる
まばらに並ぶ提灯
空っぽの右手を見る
夜と、焦げる匂いがしていた
夢に見ることも
貴方の居た空気も
指先の景色も
すこしずつ、
遠くなっていく
忘れられない、
その匂いも
心の残照に
ほのかに香るだけ
海風に髪を押さえて
青い海を見ていた
うしおの匂いがする
海と空の境界を見る
わたしの祈りは
ただ、
夏色をしていた
コメント