街角、小さな勇者たちの休息

街角、小さな勇者たちの休息

午後の光に磨かれた
橙色のひさし
幾度もの季節をくぐり抜け

街の記憶を静かに抱く
その軒先で

今日も菓亭「はせがわ」は

甘い香りを風にほどいている

時は急ぐことを忘れ

笑い声の輪のなかで

しばらく夏の気配に耳を澄ます
カーキ色の制服

紺色の帽子

砂埃を勲章のようにつけた

小さな勇者たちが帰ってくる

その瞳には

まだ名もない森への憧れと

白玉ひと粒ほどに
透きとおった歓びが

夕映えのように揺れている

風に遊ぶ
「フルーツしらたま」の旗
それは季節が街へ届けた
薄紅色の便り

色あせた看板には

長い歳月が
手のぬくもりのように残り

軒下を駆け抜ける命の輝きは

古い時間へ
新しい息吹を重ねてゆく

守り続けてきた時間

これから育ってゆく時間
二つの流れが重なる午後

アスファルトに落ちる影までもが

帰る場所を知っているようだった

誰かが立ち止まり

誰かが笑い

小さな手が空へ向かって

そっとピースサインを描く
その一瞬を受け止めるように

橙色のひさしは静かに揺れる

街角の小さなお菓子屋は

今日もまた

冒険を終えた子どもたちを
迎える港となり
甘い匂いの奥で

街は明日という季節を
やさしく育てている

投稿者

静岡県

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