遥の五詩
五つの詩の連作
雪山から始まり、そこから描写が移ります
【逍遥の詩】
沸騰する私の血潮
牙を剥く凍気、神々の脈動に寄せられて
芯まで疲労に蝕まれ
擦り切れた私の眼は足元の雪を追うばかりで
迫る眼前の滑落にさえ気付かなかった
空が砕けた
刹那に天地が反転し
冷たい濁流は私の一切の光を押し潰した
白一色の静寂
私は一つの点となって息を殺す
無関心の底
私という熱が
ただ圧殺の時を待っている
降り積もる、白の質量
奪われる、生の輪郭
【遥遠の詩】
霜色の白が、ゆるやかに形を変えてゆく
私の前で、やがて私そのものとなるために
ぱち、ぱち、ぱち、ぱち
凍てつく音が響き
肉体は静かに重さを増していく
私は永遠の、白無垢の流氷となるのだ
だんだんと永遠の白へ溶けゆく心地
もはや指ひとつ動かすことは叶わない
ここでただ、私自身の喪に服すべきだろうか
ならばなぜ
息絶えんとする私の、この眼ばかりは
あんなにも遠い、青空を臨んでいるのか
おお
太陽よ
【遥望の詩】
肉体は
ただの空衣と成り果てた
主を失った眼窩の中で
凍てつく硝子が、静かに光を反射する
客のいない国
ただ白雪の元に溶けいってしまったのか
或いはこれがすべての始まりか?
さて、この鉛筆をどうしよう
【遥空の詩】
枠を持たない真っ白な紙片に死を書けば
途端に、果てしない雪原は犠牲者を決める
鉛筆の黒鉛は
まるで引きずられた血の模様
さて、私の眼前には無窮の白の行方がごった返している
さあ
青空に虹色で彩ってやろうか
【遥拝の詩】
雪原の果てに 鉛筆はまだ動いている
白い紙面の上、黒鉛の川はもう血ではなく
一筋の光の予兆となって伸びていく
さあ
紙上の空に、色が滲みはじめる
赤、橙、黄、緑、藍、そして紫へ
まだ輪郭を持たない、生まれかけの弧
稜線の陰から、一羽のライチョウが顔を出す
冬毛の白は、もうこの光景に紛れて溶けている
瞬きもせず、ただそこに佇み
まだ半分しか架からない虹を見上げている
青空に虹色で彩ってやろうか
コメント
疲れた…あした学校なのに二時