川の先にある扉
静かな川はいつもさらさらしていた
洗剤でも入れたのかと思わせるくらい――
ある静かな夜に、
いや、大雨だったか、でも静かだった
そんな日に、沈んだことを、
今でも鮮明に覚えている――――――
水は冷たく、
薬でも飲んでいなければ辛いような
悲しい哀しい温度であった
そのように頭は記録している
激流には反抗できず、
ひたすら流れるのみ
それでも、
ただ残った一作の小説のみが、
それだけが、心残りで、
冷たいものに導かれながら、
自分はずっと後ろを向いていた――
赤い糸は切れることもなく、
それは新しい扉を開いて待っていた
自分の前にいた、赤い女性が
先にそこへ入り、その先で笑っていた
明るい扉の奥で、自由だと叫んでいた――
冷たい水の中から早く出たいと、
誰か助けてと、
そのように思いつつ、
逃げ込むように扉の中へと入った
中には女性がいて、
前に消えた友人が幾人か…
ミヤケン集を持っている人もいれば、
執筆中に煙草なんか吸っている人も、
自分を信じて消えた人も何人か――
明るく優しい世界とは、
あの扉の奥であった
戦も争いもなく、ひたすら、
ただひたすら温かい
それだけであった
「早く来いよ、お前も!」
手を出して笑う知り合いは、
ただ明るい声で笑っている
か細い声ではなく、
ただ力強い声で笑っている
「ほんま、早うせなあかんわ」
ある人は、そう言う
微笑うのも上手くなったり、
もともとそんな人なのか、
戦のせいで変わっていたのか
わからないがとにかく明るい声――
手を出されて、握りしめると
それは知らない温もりを、
伝えて来て膝をつく
この繋がりさえ見つけられていなかった
そう思い知らされた
でも、これこそが
自分に必要だった、一つの鍵――
手を握られて、彼らが言うのは、
「ほな、おかえり」
「おっ、おかえり」
それだけであった
その一言で、変わる未来。
それは自分だけではなく
みんなで作る冥界の未来――――
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