精密な沈殿

川の西岸に取り残された集落の欠片がある
その辺りを示す名前のようなものがあるはずだが
昔から地図にも記載されていない
蔓延る雑草と地下茎の匂いが取れないと言って
誰も近寄ることなく今の真夏を迎えている
軽トラで最後の家財道具を運び去るのを見た
そのように吹聴していた東岸の男はすっかり年を取り
最近は住民が見かけることも少なくなった
新製品は絶えず生産され型落ちを作り続ける
雨が降れば人は傘を差す
傘の模様の有り無しや模様の色形を気にする
風景の綺麗な表面は人をいつも幸せな気持ちにする
夜には生きていたものも生きていなかったものも
亡霊になりためらうように生温い風の中をさまよう
川の護岸工事が始まり人夫や重機が作業をしている
集落の一部も工区に掛かっているが相続等の関係で
用地買収が進んでいないと東岸の人間は噂している
所々張られた鉄条網は劣化し切れ切れとなり
境界杭に乱雑に生い茂った雑草が
境目をあやふやにした様が散見される
かつての集落は荒れ果て
けれど工事の喧騒をよそにひっそりと
夏の光の中で精密に沈殿している

投稿者

コメント

  1. 沈殿は、そもそも〈キャラメル〉のようなものか、内示する、開示する、都市交通のスポーツ化する、わたしの足が軽々と、その舌ざわりにルーレットする。村の道・道が、沈殿する。

  2. @坂本達雄
    坂本達雄さん、コメントありがとうございます。
    今、蝉の声、部屋には届いていないです。代わりにカラスが鳴いているようで、温かい紅茶をいれました。
    坂本さんの言葉を読んでいます。扉があるのですが、入口なのか出口なのかわからないまま、ずっとほったらかしです。

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