夕暮れ

   
   
   
人の愛の中に悲しみは含まれちゃいないけど
人の愛を形作るには悲しみが必要なんですね

サンゴ礁の風は、彼女の服をやわらかくこすりながら
そう言って海へと還った
   
   
   
彼女は元来、アイラブユーという言葉を
あなたを愛してるではなく
月がきれいですねと、訳す類いの女性だから
裸足でさざ波をとらえる姿は
他の何よりも白くて
にぎった手のひらは
かすかに夕暮れの匂いがした
   
   
   
終わらないことなんかひとつもないみたいに
沈むひかりにゆったりと目をほそめる
   
   
   
それはただ眩しいからそうしたように見えたが
彼女からすればそれは
抱きしめるという気持ちをまねた
誰も知らない温度のあたたかさで

だから
彼女が悲しみをすべて受けとめて泣いたりするのは
人を愛する心がやわらかすぎるせいなんだろうなと
僕はそう思った
   
   
   

投稿者

東京都

コメント

  1. 「彼女」は、きっと佳い詩人になれると思います。彼女の作品を読んでみたい。感受性は大事ですね。

  2. クールな優しさに満ちた世界ですね。それは至福。たぶん。

  3. 最初の2行がこの詩の全てかなぁと思う。
    読んでると、よく分からなくなる箇所があるのに、でも実はものすごく深くに入ってきていて、よく分かった気になる不思議な詩

  4. 恋の無い詩は有るが、詩の無い恋は無いな、と、この詩を読んで思いました。

  5. ただただすてきです。
    ことばからことばへの移り変わりの感性がとても。

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