廻り、還る先は海

わたしは歩いている。街には誰もいないようだ。蝉時雨だけが響いている。地面に残る歪みを、乾いたアスファルトを乗り越え、わたしは歩いている。ふと、いつも通っていたコンビニが、駐車場になったことに気がつく。そして、空っぽの薬局を思い出す。その残滓に、かつてあった営みを、繰り返されていた日常を垣間見る。

涼しい風。浴びて、少し目を瞑る。まぶたを開くと、車窓から青々と伸びた夏稲と、田園から高く伸びる送電塔が見えた。知らない街へと向かっているような、そんな気がした。ああ、夏休みだ。昼間の列車だ。お盆休みみたいだな。と考える。冷たい風がつむじを冷やしている。ふと、わたしは気づく。わたしは何処へむかっているのか、と。少し眠たい。

夜。暗い海の中。わたしは波打ち際に立っている。流れる波が足を舐め、寄せては返している。潮風が髪の間を走り去り、透明な、指の間を見る。いつから此処にいたのだろうか。ぼんやりと霞んだ記憶を辿ろうとする。砂浜に落ちたクラゲが薄く光り、道を象る。薄明かりの道をわたしは辿り、辿り。
還っていく。

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