十五歲の春を想う
『十五歳の春を想う』
私はどんな人間なのだろう。
孤独な人なのか――
そう、人は皆そう言う。
けれど、
ただ一人、
まだ尋ねたことのない相手がいる。
それは、
私自身だ。
私だけが知っている。
月明かりが雲を染める夜になると、
十五の頃、
眠りにつく前、
窓の外を見つめていた
あの胸の奥に沈んでいた
名もない不安と、
果てしない未知を思い出す。
十五歳を過ぎてからというもの、
私は一度として
心から安らげる日々を
生きたことがない。
眠りは壊れ、
夜更けまで眠れず、
あるいは真夜中に
理由もなく目を覚ます。
甘い愛の言葉など、
私はうまく口にできない。
ただ、
眠れぬ夜と恐れの中で、
来る日も来る日も、
「桜」という名の少女を書き続けている。
私は知っている。
彼女も、
そして私も。
十五歳を過ぎてから、
世界の美しさを
もう一度、
心から見ることはなかった。
誰もが胸に抱くはずの青春は、
私には訪れなかった。
そこにあったのは、
恐れと、
孤独と、
行き場のない無力さだけだった。
どうして私は九州にいて、
彼女は京都にいるのだろう。
十五歳より前へ
帰りたい。
そんな願いが
叶わぬことくらい、
誰よりも知っている。
時は、
誰一人のためにも
巻き戻りはしない。
積み重ねた歳月は、
私一人の願いでは
決して戻らない。
だから私は、
失われた青春の代わりに、
詩を愛した。
果てしなく続く桜並木を愛した。
青春が文学の中で揺れているのなら、
それだけでも、
この人生は
無駄ではないと思える。
青春とは、
水面に広がる波紋。
その泉はいったい
どこから湧いてくるのだろう。
それはきっと、
私の中で
執着にも似た
美しいものへの憧れなのだ。
人は皆、
ロマンを愛するものではないのだろうか。
私はまるで、
固く閉ざされた孤城のようだ。
「君は昔に生きている」
そう言われることがある。
その通りだ。
私は、
昔の人間なのだから。
一度も、
その城を出たことなど
なかった。
私の瞳に映るのは、
水辺で寄り添う
一対の鴛鴦だけ。
見てごらん。
あの二羽は、
なんと穏やかに
生きているのだろう。
けれど私は、
敏感すぎる心と
今日も向き合っている。
人生の味を、
私はあまりにも早く知ってしまった。
だから頭の中には、
絶えず
彷徨う景色ばかりが
浮かんでいる。
私は、
愛というものに
愚かなほど真剣な人間になった。
誰も入れず、
自分も出ようとしない
その世界で、
私は今日も
詩を書いている。
誰かに尋ねられれば、
私は静かにこう答える。
歳月は穏やかに流れ、
人生は静かに歩いてゆく。
私は数えきれぬ風雪を越えた。
それでもなお、
人生で最も情深かった
十五歳を忘れない。
恐れを知った者は、
もう恐れない。
情深いことは、
決して罪ではない。
ただ、
情が深すぎれば、
美しい人をも
疲れさせてしまう。
十五歳を過ぎてから、
私は一度として
楽だったことはない。
それでも、
懐かしさはあっても、
臆病者の涙は流さない。
風は吹き、
枯葉は舞い落ちる。
荒野を歩み、
痩せた馬はなお進む。
松はなお空へと立ち、
刃は折れようとも、
人生は、
そのためだけに
あるのではない。
ならば私は、
どうしてこの世に
惜しみなく
我が心を捧げずにいられよう。
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