しんしんと降る雨 (過去作)
視程は短かった
空は白かった、でも
冬のようには眩しくなく
ただ水の落ちる音の集合体が
街を包み、閉じ込めていた
紙の上に描いた数多の式を
一つ一つなぞって
美しき世界を噛み締める
あとはただの余興
空は白いままだった
眩しくもないままだった
でも、雨音は消えて
笑い声も薄れて
しんしんと降る雨
まるで雪のように在り
色に満ちていた記憶を
洗い流すには足りずとも
再び痛む古傷を
冷やし切るには足りずとも
かつて目に宿っていた光は
白い雲に吸い取られ
青い空の在る日には
眩しい陽光を反射するだけ
ニュートリノのような
言葉にできないほど微かな
様々な感情の夜を
表す言葉があったなら
自分はどれほど
それらを使うだろうか
……。
しんしんと降る雨
まるで雪のように在り
言葉にできない感情を
言葉にしたくない感情を
陽光に壊されないように
守ってくれていたならば
明日も、どうかまた降って
雨よ、しんしんと降る雨よ
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