非線型方程式
小数点以下第6位の微かな揺らぎ
青い蝶がスローモーションで羽ばたくと
無人の滑走路の座標が書き換えられていく
誰かが境界線を超えようとする予感
左辺には完璧で美しい虚数の永劫回帰
右辺にはエントロピーに向かう不可逆な引き金
けっして等号で結ばれることはないまま
捩れながら二重螺旋を織りなしていく
「均衡」と名付けられたシミュレーション
天秤の片方に隠された見えない複素数
それはいつかすべてをゼロで割る特異点
ある朝(あるいはある夜)
臨界点は何の予告もなく訪れる
システムはもはや元の調和を忘れ
線型のバランスは
平穏という名の仮定の上にしかなく
その解は決定論的な混沌へと霧散するだろう
システムが暴走を始める前に
指数の連鎖が世界を焼き尽くす前に
私たちはその曲線の軌道を
緩やかに書き換えることができるだろうか
初期値を揺らす微小なデルタ
名もなき抵抗
システムに抗う
私たちの静かな祈り
コメント
数学だけずっと赤点だったオレには関連する単語だけで身を引きそうになりますが、大覚さんがたまに見せるある種の冷徹さがオレを押し戻してくれました。
真っ向からこんなの書けるの羨ましいです。ずっと何度も繰り返し読んでいると統合できなくなりそうな怖さがありますね。それを表現しているのだとすると更に新しい恐怖が襲ってくる。
@トノモトショウ さま
ぼくも高校時代に微分・積分だったか代数幾何だったかで6点取ったことあります笑。
この詩はかなりド直球でタイトルに素直に従いました。といっても、非線型といえばカオス理論、カオス理論といえばバタフライエフェクト・・・ぐらいの浅いイメージですが。
あと、これは個人的には「反戦詩」です。
@あぶくも さま
真っ向からこんなの書くことは正直あんまりないので、いつもとはかなり違う書き方をしました。
そもそもタイトル決めて書き始めること自体ほとんどないので、なかなか苦労しました。
かっこいいなあ。やっぱり大覚アキラさんの言語感覚はかっこいい。
学術用語の中には詩が潜んでいると改めて感じました。