アルテミス

   
   
   

ぼやけた朝のひかりがきみの頬をひっぱる

明日が連れていってくれなかった仲間はずれの満月を

とりあえずテーブルの上に置いておいたら

パンかなんかと間違えて

寝ぼけ眼のきみが食っちまって

おまえが食ったあれ、月だったんだよって教えたら

そう、じゃあ今日からあたしアルテミスじゃんと

よくわからないことを嬉しそうに言って

よしそれじゃあと、三日月のソナタを携帯でかけながら

ワルツの練習をはじめて

きみのぎこちないステップにあわせて

海水たちが干潮と満潮を織りなして

きみのキレのないターンにあわせて

星々は明滅をくりかえして

そんな誰も見たことのない光景に心を奪われた人々は

この喜びをすべてうけとめるためには

まず悲しみでその土台を作ってやらなければならないという

鳥たちや草花が普段から当たり前にやっていることに

ようやく気が付いて

生きることにも生きていくことにも

意味を求める無意味さがわかって

なぜなら、世界は悲しみを感じさせたり美しさを感じさせるだけの

平等なやさしさに溢れているだけだからということがわかって

知らない他人も

赤い血が流れる自分だということを知って

憎しみを慈しみにかえることのできる勇気を

誰しも心に強く宿して

お互いの不幸を並べあってポーカーのように比べあいをする

おろかな手を止めて

その手は大切なものを握りしめるためにあるという

一番単純な愛を思い出して

今まで自分がいくつも

大切なものをとりこぼしていたことを

満たされないと思っていた自分が

どれほど満たされていたのかを

抱きしめながら思い出して

愛し愛される忙しさと

それ以外をするには

あまりにも人生が短すぎることから

争いなんてやっている暇がないことに

ようやく気が付いて

争いなんてやっている暇がないことに

ようやく気が付いて
   
争いなんてやっている暇がないことに

ようやく気が付いて
   
   
   
   
   

そんなこと、知ってか知らずか

翌日、きみは筋肉痛に苦しめられながら

体のあちこちに湿布はって

慣れないことはするもんじゃないねって笑って

手ごろな丸い朝のひかりを頭に乗っけて

ご機嫌にバランス取って楽しんでる
   
   
   

投稿者

東京都

コメント

  1. 優しい詩ですね。すてき。
    お月さんのことにも詳しくない私ですが、お月さん大好きです。月の女神も大好き。

  2. 「争いなんてやっている暇がない」の繰り返しが、今この時の世界の状況ゆえなおさら心にしみます。

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