商品説明

展示会の最終日に全ブランドの企画職が集まり
各自企画するにあたり注力したポイントを1商品プレゼンするイベントがある。
ショールカラーの呼称を失念したので
「自分は昭和生まれなんで……ヘチマカラーの……」
などと頬を緩ませながら話し始める。
きゅるんとした眼球のあざとい天使みたいな女子たちに気に入られるために
月曜から金曜まで布とPCを往復して
1階から13階を渡り駆けながら表現した世界観なのである。

胸に大きなリボンが付いたカットソー素材のワンピースは
メリハリを魅せたり隠したりして
白地にドットのプリント生地に走る黒のコードたちを
スタイルアップのバランスに配置しました。
リボンはかわいさだけでは無く
胸の大きい小さいをカモフラージュしてくれますし
テールの余韻がウエスト付近に影を落とし
こちらも細見えを叶えます。
自分なんかは胸が平均よりも少しばかり大きかったので
セーラー服のスカーフを大きめに結ぶことで同様の効果を狙っておりました。
男子は揺れるものを目で追う性質があるそうですが
自分くらいの歳になると自身が揺れまくるようになりますから
フェミニンだカジュアルだなんだの以前に
ジェンダーの概念を取っ払った形で視線を奪うことになりかねません。
ファスナーを無くすことはコスト削減につながります。
フロアの向かい合う面同士で引っ張り合うと
みなさんをこの水玉のワンピースに内在させてしまえるほどの伸縮性があります。
私は女性ですが
女性の胸元は覗いてみたくなりますので同様の衝動について理解しているつもりです。
今日のこのよき日に中から外を感じてみましょう。
あざとい天使だった頃の恋に赤い実をつけたことも
その甘酸っぱい味わいも
覚醒した毛穴から溢れて心地よく溺れることができます。
このように憑依させることが自分にとってのデザイン理解のやり方です。
絵型を読み解く時がきたなら
スキャンしておいた日々のデザイナーを呼び寄せて意識の中に動かします。
ツアーで受けた推しの視線
ランチのガンボライス
ダイナーに忘れたiPhone
お揃いで買った花柄のドレス
それらの平面を立体に起こすことがパタンナーである私の仕事です。

ヘチマカラーって私の祖父母の世代が
装苑あたりで目にしていた呼称ですよね。
はい、そこ笑いすぎですよ。
 
 
 

投稿者

東京都

コメント

  1. ヘチマカラー、知らなかった!
    喜ぶところ?悲しむところ?かはさておき。
    中から外も感じてみたいし、そっと誰にも悟られずに外から中を眺めていたい気もする。
    こういう職業や趣味などの界隈で使われる(ここでは洋服の)言葉たちって詩になるよなーなんていつも思っております。おそらく偏執狂的な何かです。

  2. 最後の一行が効いてますね。景色がパアッと広がります。

  3. わたしはいつか、たちまこさんと色々と話をしてみたいのです。
    目を見て、胸を見て。

  4. 独特の 商品説明 で、その商品が、より魅力的に映るようです。
    たちばなさんは、実際に、そのように 商品説明してるんですか? まあ、これは、詩にしてるから、こうなのかも?しれませんが。はて?
    ふふふ。でも、おもしろい 説明だと感じました。商品説明が、詩になっているのか、詩が説明になっているのか?

    私も、たかぼさんと同じように思います。
    この詩に現れると思われる スタッフたちとの距離感を、最終行で感じます。いい雰囲気の現場、という感じ。

  5. 読み終わって、もっと商品説明聞いておきたかった…と思いました。ずっと聞いて(読んで)いられそうです。

  6. @あぶくも
    さん
    学校で最初に習った名称の方が先に固定してしまった故の咄嗟のヘチマカラー。おばあちゃんが使いそうな昭和の言い回しが面白ポイントです。
    専門用語って惹かれます。昨日普段読まないSF小説をパラパラめくったのですが、知らない用語がいっぱい出てきて読みが進まないこと。横にいる人に「ゆっくり読むんだね」と言われてしまいました。

  7. @たかぼ
    さん
    比較的多くの人前で話す機会は多かったので全然話せるのですが、面白くしなくちゃって緊張します。
    最後の1行がこの詩の起こりでした。

  8. @イチカワナツコ
    さん
    大阪方面に行きたいよねって、普段から夫と話しております。
    ナツコちゃんに会えたら全てをじろじろ見ちゃうかも。

  9. @こしごえ
    さん
    現実にあるイベントで、内容は途中から詩の方面に振られています。
    私たちが普段何でも無いように使っている用語も先人が創造したいのちみたいなものなんですよね。
    現場の良い雰囲気を感じてもらえて嬉しいです。

  10. @野鳥倶楽部
    さん
    こんなんでよければいくらでもお話しします。聞いてもらえます?(笑)

  11. 勝手に、詩の書き方に当てはめて読んだところがあります。

    それらの平面を立体に起こすことがパタンナーである私の仕事です。

    このフレーズなどはとくに、詩の書き方にも被ってきます。
    最終連目、いいですね。ユーモアが効いています。

  12. @長谷川 忍
    さん
    そうなんです、どんなことも詩の書き方に通ずることになります。
    何かを産むことは詩を産むこと、何かを食べることは詩を食べること、誰かと話すことは詩と話すこと、のような。
    何を書いているか自分でもよくわからなくなってきましたが共通しているものだなぁと感じています。

  13. 愛らしい世界観。そして愛にあふれている。

  14. @あまね
    さん
    そして、愛に溢れた商品は売れる。

コメントするためには、 ログイン してください。