玲瓏剔透グライダー
ling long ling long
ling long ling long—
応答しろ!!
ジャック、応答しろ!
兄さんか……
ジャック!
お前は馬鹿だ!大馬鹿者だ!
そんなに怒鳴らないでよ……
お前は何を考えているんだ!
簡単なことだよ
僕は島を出たかったんだ
ようやく、こうやって、外の世界に……
僕は今、海の上を飛んでいるんだ
生まれて初めて……
そのグライダーは
飛び立ったら最後
着陸できないんだぞ……
知ってるよ
玻璃細工のグライダー
美術館の展示品に過ぎない
それでもよく飛んでいるよ
ダニエルが簡易エンジンをつけてくれたんだ
僕はこのグライダーで
1ヤードでも先へ、遠くへ……
嗚呼、ジャック、
蜘蛛の糸を辿るように
少しでも長く飛び続けてくれ
長く、長く!
着水したら、終わりだ……
うん、
僕もそのつもりだったけど
さっき渡り鳥が僕の右翼にぶつかった
割れた翼の先が
粉々になって降っていく
石英砂のようだ
はらはらと
海面のさざなみと同化していく
……。
兄さん、泣かないでよ
僕は願いを叶えたんだから
やっと島から解放された!
あれが水平線、空と海の境……
どちらも青いのに
くっきりと分かれている
広い、どこまでも続いている
果てはあるのかな……
あの境まで行ってみたい
でも、もう駄目そうだ
風において行かれる……
ジャック、飛び続けろ!
空が遠ざかって行く
どんどん墜ちる、散る……
ジャック!
答えろ!
ti tou —
ジャック!ジャック!
ジャック・ポーチー!
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日本WEB詩人会の公認お題企画が月1ペースで始動しました。
9月は以下の通りです。
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Vol.1お題
『玲瓏剔透グライダー』
※二重鉤括弧は含まれず
投稿期間は9/18(金)〜9/22(火祝)です。
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詳細や今後については公認掲示板のお題スレッドでご確認下さい。
https://rara.jp/poekai_2021/
コメント
通信音として仕掛けられてるのがおもしろいです!
右翼にぶつかった鳥は左側の兵士の魂の分身のようでした。
玻璃細工のグライダー、海と空から光を乱反射してとても美しいのでしょうね。
宮崎駿風のアニメのワンシーンが脳内に再生されました。砕け散る硝子の翼がキラキラと光って見えました。
この詩の ジャックが、
僕は願いを叶えたんだから
やっと島から解放された!
というのが良かったです。
何かから、解放された、ということは、ほんと嬉しいことだと思います。
たとえ、どんなことになろうとも、ジャックは、本望だと思いました。
この詩には、そういう安堵感があります。
ドラマ感すごくて引き込まれました。彼の背景をもっと見たかった。
水平線はどこまで行っても目の高さのまま、決して追いつけないですよね。もしかしたら人間が勝手に作り出した概念上の幻かもしれませんね。
島から抜け出したジャックは既成概念を破壊して新たな境地を切り開く開拓者なのですね。本人は自我のためかもしれませんが、名もないまま歴史に埋もれていく、崇高なファーストペンギンです。
@たちばなまこと
様
通信音は最初なかったのですが、突然始まるな、と思って、この読み方はまさに通信音ではないか!と入れました。着目下さり、感謝です。
言葉の響きって面白いですね。
@たかぼ
様
宮崎駿風は、かなり嬉しいです!
あんな綺麗な感じにイメージにして下さり、ありがとうございます。
@こしごえ
様
この詩は、デュ・ガールの「チボー家の人々」をオマージュしています。
チボー家では、無謀にも反戦のビラを飛行機から撒いて、ジャックは死ぬのですが、次の巻に読み進んだら、そういうわけで死んでいて、本文にその描写はないのです。
だから、こしごえ様がこの詩のジャックに想いを馳せてくださったことが、とても嬉しいです。ありがとうございます。
飛び立ったら着陸できないなんて…特攻みたいで、そんな…と悲しくなった。スカイクロラ(好きなアニメ)みたいだ。
@トノモトショウ
様
この詩は「チボー家の人々」をオマージュしているのですが、原作ではジャックや親友のダニエル、兄のアントワーヌが壮絶な人生を繰り広げています。
この詩のジャックは、鎖国していて、船も飛行機もない島の人、という思いがあり、ドラマを感じて頂けたのは、原作の奥行きがあったからかもしれません。なるほど、この詩のジャックの背景も、自分なりに探ってみようと思います。ありがとうございます!
@たけだたもつ
様
そのお言葉、ジャックが救済されます。ありがとうございます。
私たちがそう見えているだけの水平線、追っても追っても辿り着けない、人間らしい見え方にも感じます。
偉業を成した人の影には、たくさんの挑戦者が…。報われる人は一握りですが、挑戦者はそれこそ命をかけて取り組むのでしょうね。その生き方は、確かに崇高なファーストペンギンです!
@花巻まりか
様
嗚呼、悲しい思いをさせてすみません。けれど、ジャックは死ぬことが目的で飛んだわけではないのです。
ジャックがどうなったかは、誰にもわかりません。もしかしたら、ウミガメに引っ掛かって、どこか遠くで新たな人生を生きているかもしれません…。
切迫したドラマ感に引き込まれてどんどん読めてしまう仕掛けとピンインの活用が良い味を加えていて面白かったです。チボー家オマージュとも気づかず、関係ないんだがMajor Tomが浮かんでいました。
@あぶくも
様
嬉しいお言葉、ありがとうございます。
Major Tomの存在を今、知りました。飛び立つ人は、時に宇宙や空に取り込まれてしまうのですね。
玻璃細工のグライダー、いいですね!着水できない不完全さがことばたちの核になっているようで、胸に迫ってきます。
@あまね
様
着水できなない不完全さ…、自分の中で理論だっていないため、なるほど、そうか!と思いました。そうか、そうですね。素敵なお言葉、ありがとうございます。
> 蜘蛛の糸を辿るように
> 少しでも長く飛び続けてくれ
この表現がささりました。
@ノラスケ
様
拾い上げて下さり、ありがとうございます。切れそうで切れない蜘蛛の糸に、兄さんの願いを込めました。